推奨ウェブブラウザは、InternetExplorer 7.0以上/Firefox 3.0以上です。

ホーム > 研究活動 > アーカイブ

最新ニュース

姿勢から考えるリハビリテーション(20010年1月30日開催)では、徹底的に姿勢と運動のことを考え、自分の体で試すことができる形でご提案しました。 その一部をご紹介します!

まず、なぜ姿勢なのか・・・ということからです
同じ環境でも、姿勢によって環境のとらえ方が変わるということを体験してみます
天井に映し出したスヌーズレンのディスクローテータを・・・

普通の椅子に座って見るのと ティルト機能の付いた椅子に座って見るのとでは
姿勢3
「あっスヌーズレンのディスクが回ってる…」
姿勢3
「あ~落ち着くなぁ~きれいだなぁ~このまましばらくぼ~っとしていたいなぁ~」

私たちが生活の中で知っていると思っていることは、実は全く違う感じ方ができる可能性を持っているのかもしれないということです。
自分の状態で…その自分の状態に大きく影響するものとして姿勢を捉えます。
姿勢が変わると 環境とのつながり方が変わります。
姿勢の状態が良ければ、一つ一つのものや事柄との出会いが変わってきます。
全く素通りしていたものが意味を持ち出したり、難しくていやだなぁ~と思っていたことが実は簡単な事だったことに気づいたりします。 
環境の持つ性質アフォーダンスとは、ギブソンが言うようにただ単にそのものの特徴を表わすものではなく、人がそのものとどのように関わるのかによって現れてくるものだということが解かります。そしてその関わりのシステム「見るシステム」「聴くシステム」「触るシステム」「味わい嗅ぐシステム」の基本となるのが「姿勢定位のシステム」今回のテーマということです。
姿勢の問題というと、何か体に難しい問題があって・・・と思いがちですが、上記のスヌーズレン体験のようにただティルトする椅子に座るだけで、環境の印象が変わるほど、私たち自身も日常生活の中で様々なストレスにさらされて、不都合な姿勢をとり続けていると考えることができます。

姿勢3

そもそも、動きとは重心を移動させることによって起こるものですから、「重心を大きく動かすことができる」ということが動きやすさのポイントとなります。もしも、できるだけ小さな重心移動で前の物を取ろうとすると不自然な体のひねりが起こったり、腰や背中を過剰に緊張させ痛みが生じたりしてしまいます。

見ること、聴くこと、触ることなど活動のほとんどが前方で行われます。しかし、体を支える背骨は後方にるので、無意識に後方に重心を残そうとする背面の緊張を引き起こすと考えられます。


姿勢4

これは体の安定性を補助するシートを利用した時のリーチングの状態です。頭が大きく動いて柔らかな動きで、大きく腕を伸ばすことができているのがわかります。

安定して動くことができるポイントは、股関節を屈曲させることができることと坐骨で支えて坐骨のカーブを利用して前方へ体重移動ができるということ、そして仙骨の上に背骨が快適に乗っかっていること。


仙骨は自ら自立することができない骨なのでそれをいい位置にキープしてあげること、つまり仙骨を挟んでいる腸骨を坐骨の動きを妨げずかつ倒れすぎない位置にキープできると、体はご機嫌に動くことができます。
これが、動きやすい体と動きにくい体のしくみです。
つまり、運動そのものを問題にする以前に、スタンバイの状態から違っているということです。
研修会当日、動きやすいからだと動くことの難しい体の坐骨の状態を面圧センサーで見比べてみました。

仙骨


坐骨の状態を面圧センサーこの画像は、研修会当日採型モデルになっていただいた男性の採型前の座面圧と採型後の座面圧の違いを比較したものです。
採型によって体のアライメントを機能的に整えるということは、どこで支えると安定して動きやすいのかということを、自ら体で発見させていくという作業だということができます。
実は研修当日、採型後彼の身長は2cm高くなり、目線も高く、周りの見え方が変わって (本人談)肩や首の苦痛は軽減しました。そして本人だけでなく、周りで見ていた参加者の方も一緒にごきげんになる体験をしたのでした。人が元気になっていく姿を共有することで、周りの人もなんだか楽しくなってくる。この心地よさの連鎖が、エコロジカル流「つながりの法則」なのです。 著名な運動生理学研究者である猪飼道夫氏によると良い姿勢とは

  1. 力学的に見て安定していること
  2. 生理学的に疲労しにくいこと
  3. 医学的に健康であること
  4. 心理学的に見て気持ちの良いこと
  5. 美学的に見て美しいこと
  6. 作業能率から見て能率の良いこと

またアメリカの運動生理学者スタインハウスはこれらに加えて「動きやすいこと」をあげています
研修会で採型をした男性は、実はピーエーエスの社員で、試験的に彼の事務椅子を作ってみました。

使用開始3週間後

毎日パソコンに向かう仕事をしている彼の今までの姿勢とPASシーティングの違いは明らかです。このように良い姿勢が良い循環をもたらすのであるならば、悪い姿勢は体に悪い循環をもたらしてしまうと考えることができます。 快適だから「できる」を繰り返し、どんどん自分でできるようになる!!!これは障害を持つ子どもの場合も同じです。

出会った時のNちゃん

これは、PASシーティングによる姿勢が快適な姿勢であるから、それを利用して快適さを自ら求めた結果の変化です。このように、障害を持つ方の体のことを、私たちは自分の体を使って考えることができます。
モーシェ・フェルデンクライスが「自分の体でできることだけを人に伝えることができる」と言った様に、私たちは、自分の体が本当に楽な方法を自分自身で表現できるようにならなければなりません。

それが今回の研修会を企画した目的です。

研修会感想:

エコロジカルセラピー研究所事務局の井口です

2010年1月30日午後1時半~4時半の間、みのお市民活動センター・多目的室にて研修会が行われました。「姿勢から考えるリハビリテーション ~その技術と理論~」というテーマで、エコロジカルセラピー研究所の代表でもある野村先生を講師に、講義と実技(実験?)が行われ、リハビリや支援学校に携わる方など多くの方にご参加いただきました。
 
 講義では姿勢について改めて自分の考え方を見直す機会となりました。よい姿勢とはどんな姿勢なのか?今まで左右対称が良い姿勢といった考えが自分の中に漠然とありましたが、日常の動きの中では左右対称の姿勢でいることはほとんどありません。
・バランスが崩れた状態でいかに姿勢を保つのか?
・体のどの部分を保持してどの部分を動かすのか?
・体の構造自体が非対称である(頭と同じ重さの肝臓は体の右側にある)などなど
改めて見直してみると当たり前のことばかりなのですが、これらのことを繋げて考えることはあまり無かったように思います。まさに目から鱗でした。

 研修会の後半では一人の被験者を招き、採型機を用いて座位姿勢の型取りが行われました。快適な姿勢の前後では何がどう変わるのか?具体的に数値化して検証するために実験の前後で身長・脚長・座位の座圧の計測と、立位姿勢を正面・左右から写真撮影を行い、型取りの前後での比較を試みました。
 その結果…身長は+2㎝、座圧は左右の坐骨により均等に圧がかかるようになっていました。何故、身長がこんなにも伸びたのか!?会場は驚きでいっぱいでした。
 採型前後の写真を見比べると、脊柱の前後の彎曲程度が少なくなり、上方に伸びているような印象を受けます。被験者本人からも「体が軽くなった」との声が聞かれ、頭部・脊柱・骨盤・股関節など重みのかかる各関節のバランスを整えることで体の一部分に加わる重圧が減少し、体の重みが取れたように感じるのではないかと思われます。
 
 普段、自分たちが当たり前に感じていることを客観的に示すことは難しく感じますが、エコロジカルの活動を通じて何故このような現象が起きているのか?今後も具体的に検証していきたいと思います。

・・・というわけで2月27日(土)の勉強会ではみんなで採型大会をしました。

採型前後の座り方の違いを面圧センサーで計測し、身長の変化、前屈運動の際の柔軟性について比較しました。 来年度の勉強会ではこれらデータをもとに、さらに姿勢定位の法則について検証していきたいと思っています!!