座った瞬間に「ありがとう」が口をつく|考えていること|作業療法士 野村寿子

2013.10.15 / conversation

座った瞬間に「ありがとう」が口をつく
今回、p!ntoについて語ってくれたのは、「さあさん」の愛称で知られる澤口裕二さん。体の動きについての学習である「キネステティクス」を日本に紹介し、生理学、進化論など様々な角度から人間の体の不思議を研究している医師だ。とても親しみやすい表情、そして何より、めくるめく言葉の豊富さ! 「小さいとき、百科事典をたくさん読んでいた」とあって、澤口さんとの会話は「どんなことでも納得させられる時間」でもある(それはホームページ『さあさんの「秘密」の小窓』からも伝わってくる)。目の前の人の発言をしっかりくみとり、あくまで相手を尊重しながら接する姿勢は、まさに澤口さんの研究内容にシンクロしている。

「僕は消化器外科時代に褥瘡(じょくそう/※床ずれ)のケアを行っていました。そのとき介助や動きの重要性を認識し、キネステティクスを応用して人の動きの研究に没頭していきました。今までは患者さんが、人に合わせようとしていた(もしくは、させていた)けど、そうではないんです。患者さん自身が、あくまで自分の楽な態勢を見つけだし、調節することが大切なんです。僕たちスタッフはそれを理解し、その手助けをする。つまり、こちら側の『これが楽だ』という概念は捨てなければならない。認知症の方に対しても、同じこと。教えこむのではなく、彼ら/彼女らの意味と実態を理解し、一番楽な生活スタイルをみんなで探していく。時間はすごくかかるけど、僕たちもじっくりやっていく。そして『ありがとう』という感謝の言葉を口にできたとき、ひとつの到達があるんです」「つまり、患者さんに学習環境を与えることなんですよ」と語る澤口さん。そこで、p!ntoの話へと移行する。

「p!ntoはまさに、僕たちが目指しているケア、サポートのあり方なんです。教育ツールのひとつ。野村寿子さんは、30年間の人との触れあいの体験から、p!nto通してそれを実現させた。長い時間をかけたなかで、日本人の体型をもとに普遍的なものを作った。まさに先ほどの話につながるのですが、p!ntoに座ったとき、『ありがとう』という感謝が生まれたんです。教育とは、自分が困っている点、改善すべき点について、自分自身で気づくまでの状況を作ることだと思うんです。そこに気づいて、何をすべきか分かる。p!ntoに座ったとき、いままでどれだけ身体に負担をかけて暮らしていたかが分かるんです。立ったり、座ったり、そういう日常的なことも、いままでどれだけ誤った学習のなかで繰り返していたのか、もっと楽にそれができることにはっきり理解できる。現状、p!ntoはどんどん世の中に広まっていますよね。それって、それだけ(身体について)困っている人が増えているんだと思います」

そして澤口さんは「座っていると声もだしやすくなるし、食事をしているときなんかは手もスムーズにだせる。目の動き、肉体バランス、そして何より心の落ち着き。どれもガラッと変化していく。そうやって良い方向へと自分を導いていくと、人とのコミュニケーションもうまくとれるようになるんです。社会との関わり合いもスムーズになる」と具体的な体験談を持ちだし、野村に「本当にありがとうございます」と深く感謝。

p!ntoが身体にもたらす好作用。澤口さんはそれについて、きめ細かい発言で的確に、分かりやすく語っていきながら、しかし最後に「まあ、p!ntoは見た目が何よりかっこいいよね」とあっさりと笑った。その表情が何とも印象的だった。


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